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価値観は千差万別で人の数ほどありますよね (146号 2006年11月)

ミスターリサイクル
 わたしの小さい頃は、小さな町工場がたくさんあり、アーク溶接の鉄の焼けるにおいや、油の焦げるにおいが迷路みたいな路地に立ちこめていました。そんな細い路地裏で鬼ごっこをしていると、いつの間にか服にかぎ裂きを作ってしまい、よく怒られたものです。
 あまり裕福ではなかったわたしの家では、服に穴があいてしまったときは、祖母が繕い物をして直してくれました。それも大概一晩で直してくれます。すぐに服が直ってくるのをいいことに、昨日は立ち入り禁止の有刺鉄線を飛び越え、今日は塀から塀に飛び移り…そのたびにわたしの服は祖母の手で修繕されていきます。その修繕箇所が冒険の証、名誉の勲章、自慢のタネになるようなそんな時代だった気がします。
 いつしか時代は移り変わり、膝小僧に穴があいたジーパンのことを、ダメージジーンズなんて呼ぶようになり始めた頃のお話し。わたしの弟が何年もかけて1本のジーパンを履き倒し、膝がいい具合に擦り切れてきて、もう一度履けば膝に穴があく一歩手前まできたときのこと。洗濯に出したら、祖母が繕い物をしてくれてバッチリ直って戻ってきました。それを見て彼は目の前が真っ白になったそうです。修繕されたジーパンを握りしめ一言「おばあちゃん、ありがとう」。
 祖母にダメージジーンズの価値がわかるはずもなく、孫にみっともない格好はさせられないと夜なべをして繕い物をしてくれたのです。それが祖母の価値観。最近では新品のジーンズにヤスリをかけて穴をあけたり、ペンキで汚したりした物が売られています。それは趣味趣向ですからわたしが意見をする余地は無いですが、それをワンシーズン履いただけで捨ててしまうのは如何なものでしょうか。価値観は千差万別で人の数ほどありますが、「自然と人間との共生」が叫ばれている今、自らの価値観をもう一度考えてみる必要があるのではないでしょうか。

ちなみに誕生石はバイカラートルマリンです!
ミスターリサイクル
※月刊リサイクルデザイン146号(2006年11月)、147号(2006年12月)に掲載。